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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter96 『求めるもの』 96-45


ポチャンッ・・ ポチャンッ・・

(月光に照らされるその祭壇の上に。 天井から、黒い雫が。 一滴。 一滴。
寝台の上に眠る人物の上に。 注がれていた。)

(それは、先ほど。 男性がいた、黒い“闇”を集めたプールの中から、高く。
黒く染まる。 ガラスの天井へと、吸い上げられ。 魔力を使い、
男性の、黒い幾何学模様から。 吸い上げた“命”を混ぜ合わせ。)

(一滴。 一滴。 まるで、わずかな血を注ぐように。 寝台の上に眠る人物を、
微かな希望で、生かそうとしていた。)

バササッ・・

(フェルゼンは、濡れた身体のまま、マントが汚れるのも。 美しいガラスの床が、
汚れるのも構わず。 一歩、祭壇の上へ、上ると。
寝台の上の人物に向かい。 跪き、その人物の顔を。 両手で覆う様に。 自身を近づけ、
赤い瞳で、見下ろした。)

「・・リザ・・。」

「お前は。 美しい・・。 世界は、じき。 “闇”に染まる・・。」

「もう少しの・・辛抱だ・・。」

「お前の望み通り・・。 俺とこの地上を・・。 あの国を終わらせよう・・。」

「・・なぁ? 俺と・・。 新しい世界を築くんだ・・。」

(間近で、フェルゼンが見つめる先で。 リザと呼ばれる女性の黒い瞳は、見開いたまま。
生気を失い。 虚空を見つめ、大きく開かれていた。)

『フェルゼン・・。』

『・・フェルゼン・・。』



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