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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter96 『求めるもの』 96-52


「あの子。 ほんとは今夜も一緒に行きたいのよ。」

「ただ、待ってるのはつらいから。」

(佐織は、外灯の下で。 ふと、上って来た坂道を後ろに振り返った。)

「は〜ぁ。」

「この桜ヶ丘の上からの景色、綺麗よね。 ふふっ、ほんとに小さな街だけど。」

(坂の中ほどから、見下ろす先に。 ガードレールの向こうに、
夏の夜空に光る、風見市の街の夜景が、眩く眼下に広がっていた。)

「はは、俺のランニングコース。 お前も走る?」

「嫌。」

「っ、早。 俺は、もう少しお前との距離を・・。 こう・・なんつーか。」

「は?」

ザァァッ・・

(その向こうに続く海岸線から、まだ熱を帯びる風が。 吹いて来た。)

「・・? なんで、あんたは。 さっきから嬉しそうなのよ。」

(佐織は、わざと冷めた目をして。 横目で、先ほどからにやにやしている駆を
見上げた。)

「べ・つ・に〜。」

(風が、焼けた駆の頬を撫で、佐織の。 美しく、長い髪が。 無造作にまとめられた
束からほつれ、いく筋か。 その凛とした頬にかかり、揺れるのを
目を細めて。 嬉しそうに見た。)

「お、来た来たっ!」



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