HOMENovel

Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter96 『求めるもの』 96-7


トクンッ トクンッ

(夏樹の心臓は、粒樹に守られ。 静かに鼓動していた。)

***

トクンッ トクンッ・・

キラキラキラッ・・

(金色の瞳に映る。 無数のビル群のネオンが。 瞬きをするたび、
窓の外から反射し。 虚ろな意識に、聖は目を細め。 笑った。)

「くっくっくっ。」

(都心の高層ビル群の中にある、一際高いビルの最上階の窓から。
聖は、国の要人たちとは、別の場所で同じ景色を眺めていた。)

「こうして、高いところからいつも見ていると。」

「人間は、何でも出来ると、思ってくるものだね。」

「たった一つの願いでさえ。 叶えることは、

難しいというのに・・。」

「愚かなことだ・・。」

(細めた目の上に。 眩い銀髪が流れ、眉をしかめた。)

「左様でございましょうか。 聖様。」

(眩いシャンデリアが照らし出す、高い天井から。 射し込む明かりは。
白く。 その場を照らし。 細く長く続く、足元の赤絨毯も。 四角く、夜景を切り取る
前面に続く窓ガラスからの景色も。 なぜか、急に。 しらじらしく目に映り。
何の価値もないものに、思えてならなかった。)



『 次ページへ 』 『 前ページへ 』
このページのトップへ