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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter96 『求めるもの』 96-8


(傍らに控えながら、橘は。 長年仕えて来た中で、初めて、聖の心を
読み取ることを恐れた。 聖の本当の願いを、橘は予感していた。)

『“時の欠片”をすべて集めることが、貴方様の願い。』

『けれど、それが叶わなければ・・。 もう一つの願いを、求めるに違いない。』

(橘は、時の欠片がそろい。 粒樹が戻ることを願っていた。 でなければ、
主人の望む、もう一つの願いを。 叶えなければならない、それはとても。 橘には
出来ると思えなかった。)

「ふぅ・・。 彩は、手を焼いているね。」

「少し僕が、脅しをかけたくらいで。 叶うことではないよ。」

「とても、医学的には難しいことらしいからね。」

(金色の瞳は、ゆらめき、笑っていた。)

「僕は、もう少し。 期待しているんだけど。」

「でないと、困ったことになる。」

(口元は笑い、その表情は、穏やかなものだったが。 橘は、冷やりとした空気を感じた。)

(主人が、その先を口にだすことを恐れ。 橘は、意を決して、
言葉をかけた。)

「・・聖様。 本日はお疲れのご様子。 そろそろ、お屋敷へ

お戻りになられては?」

「このところ、しっかりとお食事も取られておりません。 少しは、お休みに

なりませんと。 千波様が待っておられます。」



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