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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter96 『求めるもの』 96-73


「ふぅ・・。 ・・はぁ・・。」

(疲労した身体は重く、繰り返す思考は、時折蘇る、過去の光景と重なり。
白い靴の足取りは。 まるで、自らが操る、無数の異空間から受ける重力を
引きずるように。 ゆっくりと、辺りに重い波動を残しながら。
夜露に濡れる、庭の上を進んだ。)

ザッ・・ ザッ・・

「・・ふぅ・・。」

(揺れる、金色の瞳の視界は、歪み。 闇夜のせいか、定まらぬ視線が。
乱れ、流れる銀髪の、奥で鋭く目を細める。)

【初め、あなたは。 彼に、目的を与えた・・。】

『僕と来ないか?』

(記憶の中で、聖の金色の瞳に。 小さな夏樹の姿が映っていた。)

『僕と行けば、他の人とは違う。 きっと自由にどこかへ出かけたり。

誰かと仲良くなったり。 普通の暮らしは出来ないが。』

(初めて出会った時。 夏樹は、何もかも失っていた。 研究開発所へ、夏樹を
取り戻しに来た母と。 研究施設にいた子供たち。 そしてその街の人々。)

(すべての建物さえも、震える小さな夏樹をぽつんと、その場に残し。
一瞬で、“闇”は、全てを土に返し。 夏樹を一人にしてしまった。)

『君の力を必要としている人のところへ行ける。』

(その言葉は、不十分だった。 惨劇を目にした夏樹の身体は、闇を浴び、
氷の様に冷たく。 深い紺色の瞳は、絶望に見開いていた。)



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