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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter96 『求めるもの』 96-75


「取れるものなら、取って見ろと。」

「言いたげじゃないか? 夏樹。」

(聖は、黄金色の目を細め。 この上なく、眩しく。 愛しいものを見つめるように、
嬉しそうに微笑んだ。)

「・・。」

「聖。 ここへ来れば、会えると思ったから。」

(目の前に、白く煙る。 バラの園に、朝靄の中、漂う。 香りの中に、
聖の求める人は、居なかった。)

(まるで、夢を打ち壊す様に。 現実の夏樹が立ち。)

(深い紺色の瞳が、聖を見て笑った。)

「そうだね。」

「取れないと思うよ。」

(紺色の瞳が、きらきらと煌めき。 明けてゆく太陽が。 それに味方した。)

ザザッ ガッ

「・・僕を、甘く見てるね。」

(聖はあっという間に、夏樹の間合いに入り。 その喉元をつかんだ。)

『・・!』

「・・。 出来ないよ。」

(だが、夏樹は動揺しなかった。)



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