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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter96 『求めるもの』 96-76


「出来ない。」

(冷たく見上げる紺色の瞳に。 聖は表情を無くし、頬に触れる程の距離で、
黄金色の瞳が揺れ。 その手が夏樹の胸元に触れた。)

『聖・・。』

ガッ

チリンッ・・

「ん・・。」

(夏樹は、自分に触れている、聖の手をつかんだ。 聖は、触れた先から伝わる、
冷たさが心に呼び覚ます悪夢と。 自らが与えた、銀の指輪に阻まれ。
その雪の様な肌の胸元から。 命を奪うことは、到底出来ないように思われた。)

「この銀の指輪は。 粒樹の形見だろう。」

「僕は、最後の時に。 彼女に出会ったような気がする・・。」

(聖はまだ、夏樹の胸元に触れていた。)

「どうして・・、あの時。 そうしなかったんだ?」

「あの時なら、出来ただろう。」

「あなたは、僕と。 長い間、一緒に居過ぎた。」

(夏樹は微笑みながら、氷の様に冷たく見開く聖の瞳を見上げた。)

「僕も・・。」

【そして・・。】



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