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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter97 『共に。』 97-1


【ガアァァァーッ】

ガッ ザザザザザーッ ビシュッ ビシュシュ・・!

(強い日差しを遮る程、高く舞い上がった“闇”が、
視界を塞ぎ、青空を隠す。 鋭く太い枝が。 大きな手から放たれると、
それはしなやかに、螺旋を描きながら。 もがく“闇”を締め上げ。
粉々に握りつぶした。)

バシャシャッ・・

(黒い“闇”の雨を払い、晃は。 鋭い視線を、辺りに向けた。)

「・・ふぅ。 これで5匹目か。 今朝は随分と酷い。」

「あいつのことだ、どの結界も修復していないだろう・・。」

「敵の侵入は、歓迎か?」

「あの狐次郎という男から。 敵の情報を引き出せるとも、思えんがな。」

(晃は、“闇”になぎ倒された、無残な街路樹に眉根を寄せた後、
足元につづく、裂けた地面が。 根こそぎ、引き抜き。 ガードレールごと、
丘の下へ。 破壊されつくしてしまった、桜並木に。 悲痛な表情を浮かべた。)

「ここが、桜ヶ丘か。」

「この状態で良く。 snow dropが、無傷だ。」

「さすがに、手を抜いていないか。」

(晃は、一番近い、桜の木の枝に触れ。 折れたその幹に、言葉をかけた。)

「見事な桜だ。 すまなかったな。」

「異空間の幻とはいえ、痛みは同じだろう。」



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