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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter97 『共に。』 97-110


(夏樹は答えた。 躊躇いなく、白く冷たい手が、温かな紫苑の手を
握り返した。 だが、深い紺色の瞳は、悲しげに揺れた。)

「魔法が、解けないといいな。」

(穏やかな、深い紺色の瞳の煌めきに。 紫苑の胸に、熱い想いが込み上げた。)

『あなたのことが好き・・。』

『好きです・・。』

『ただ言葉に・・、出来たらいいのに・・。』

(大粒の涙が、あふれた。)

「・・っ、・・っ。」

(驚き、紫苑に寄り添うと。 夏樹は、紫苑の顔を見つめた。)

(ぽろぽろと流れ出る涙が、ピンクに染まる頬を伝い。 堪えようと長い睫毛が瞬いても、
止めどなく涙は流れ。 小さく肩を震わせていた。)

「ごめん。」

「怖かったね?」

「ははっ。 少し、離れていた方が、良かった。」

「“闇”のそばにいると、身体に沁み込むから。 触れてはいけないと

思ったんだけど・・。」

(夏樹は笑い、思わず。 片手で隠す様に覆う、紫苑の色づく頬に伝う大粒の涙を、
そっと、その手で拭い。 頬をなでた。)

「・・っ。 ・・っ。 ううん・・。 違うの・・。」



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