HOMENovel
Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】
Chapter97 『共に。』 97-40
(シルクのように、滑らかなドレスの長い裾が揺れ。 美しい装飾が、
チリチリと、心地良い音を立てる。)
「よく帰りましたね。」
(女性は目を細め、悲しみとも。 喜びともとれる。 表情を浮かべると、
そっと、駆け寄りながら、伸ばしたソラの手を取ろうとした。)
「ソラ・・? これは・・。」
(だが、伸ばしたその手は。 実体を持たず。 女性の美しい指先を、通り抜けた。)
「サラ・・。」
「俺は、まだ戻れない。」
(実体を持たないソラは、触れることのできない。 母であるサラを、愛情を込めて
見つめた。)
(王宮の、聖なる“光の樹”から生まれてから、ソラを、次の王とすべく
育てて来た。 だが、それを認めない者も多かった。)
「・・“闇の魔術”・・っ! “光の力”を持ちながら、“闇”に触れるとは・・!
おぞましい・・っ!」
(古くからの秩序を重んじる、元老院には。 次期王に、“闇の樹”の王を据えると
考えを変えないものもいた。 あるいは、“闇の樹”の王が生きていると信じ。
あるいは、この国は終わりだと、絶望した。)
「そんな付け焼刃で、王になったつもりか? 次の王になるは、正統に、“闇の力”を
持つ者だけだっ。」
「いな。 “闇の樹”は滅びた! この国は、もう終わりだっ!」
『 次ページへ 』 『 前ページへ 』