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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter97 『共に。』 97-56


「春人さん・・っ、夏樹さんが・・。」

「ここにいろ。 俺が様子を見て来る。 チイ、佐織たちに心配させないように。」

「あいつが気にする。」

(春人は、そっとチイの肩をぽんとたたき。 微かに笑みを浮かべ、
夏樹と菖蒲、紫苑のもとへ。 暗い照明の中、人波を抜けた。)

トットッ

「どうした?」

「・・。 近くで、強い“闇”が起こったようです。」

「・・・。 あの、黒い影が傍に・・。」

(菖蒲は、辛そうな表情を浮かべ、視線を夏樹から逸らさぬまま。 背後へ、
様子を見に来た春人に、言葉を返した。)

「ふぅ・・。 幸先が悪いな。」

(両腕を組み、眉根を寄せ。 春人はため息をついた。 うつむく夏樹の顔は蒼白で。
胸元を掴んだまま、顔をあげられそうもない。 自分がそばに寄っても、菖蒲の
支えている手を、払いのける余裕さえない様子に。 深刻さを感じ取った。)

***

ピチャンッ・・ パシャシャンッ・・

ダッ

「夏樹・・! 待たせたな。 行こう。」

(ソラはまるで、ひと泳ぎしてきたかのように。 魔法の滴を受け。 冷たい飛沫を
あげながら。 輝く笑顔で、夏樹に手を差し出した。)



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