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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter97 『共に。』 97-79


***

「僕にできることは、ただひとつ。」

「これからもずっと、風と、共に戦うことだけだ。」

(魔法陣から現れた光は、夏樹の身体を覆い。 夏樹の胸元に光る、
銀の指輪を揺らした。)

(封印された記憶は、わずかに流れ出し、心を震わせた。)

「もう目の前で、」

「大切な人を、失いたくない。」

(甦る断片は、恐怖を呼び覚ました。)

***

『・・お母さん・・っ。』

(甦るのは、街を覆い尽くす。 黒く高い、巨大な“闇”)

***

『僕は、生まれなければ良かっただろうか・・。』

『力は人を不幸にする。』

『触れた相手の人生を変え、命を奪うことさえあるのなら。 僕は、いない方がいい。』

『幼かったあの日、巨大な波となり押し寄せた“闇”は、

母を飲み込んだ。』

『差し出された母の手に。 銀の指輪が、光っていたことを。 うっすらと覚えている。』



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