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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter98 『境界』 98-103


「ん・・。」

(菖蒲はほっとし、頭上を見上げた。)

「良かった・・。 はっ。」

コオッ・・ バリリリッ・・

(遠く頭上で、まるで、火花を散らす。 雲の向こうの雷の様に、
ドーム状に、包まれた透明なベールの向こうで。
追手の力が弾け散っているのが見えた。)

「菖蒲くん・・。」

(身体を起こした静乃は、夜露にぬれた芝草を身体につけたまま。
息を切らして、大きな瞳で菖蒲を見つめた。)

「もう大丈夫。」

「ソラ様の魔法と、聖様の結界が。 私たちを守ってくださったようですね。」

(空間通路を抜け、静乃を守りこの場に連れてきた。 菖蒲の、いつも美しい
燕尾服は、そこここしわが寄り、土のついたあごに、額から流れる玉のような汗が
こぼれていた。)

「くすすっ。」

『菖蒲くん・・っ!』

(微笑んだ笑顔が、いつも通りで。 こみ上げる、想いが。 静乃の心にあふれた。)

***

「そう簡単に、邪魔させないって言っただろう。」

(ソラは、上空を射抜くように。 天高く。 夜空を指さした。)



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