HOMENovel

Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter98 『境界』 98-106


「・・!」

(息の止まるような一時。 静乃は菖蒲に口付けた。)

『・・・。』

(伝わるのは、悲しみにも似た。 愛情。 友を失う苦しみと。
自分に向けられた、深く強い気持ちに。)

(菖蒲は、静かに目を閉じ、応えた。)

***

「くすくすっ。 どうした?」

「風呂に入って来たのかと思ったんだけど。」

(部屋のドアを開け、出迎えた夏樹は。 見る影もなく、
あちこち汚れた菖蒲の様子に、微笑んだ。)

「くすっ、そうですね。」

「すみません。 少し色々ありまして。」

「静乃さんからお聞きしたこともございます。」

「後で、皆様にお話します。」

(夏樹はうなずき、菖蒲を中にうながした。)

キイッ

「うん。 今も、皆で話していたんだ。」

「エアリエル国のことを。」



『 次ページへ 』 『 前ページへ 』
このページのトップへ