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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter98 『境界』 98-11


「・・この街と・・、世界を覆う結界を・・。」

「壊してしまうところだ・・。」

(黄金色の瞳は、輝きを取り戻し。 ガーデンの入り口。 美しく咲き誇る、バラの
アーチを抜け。 アンティーク扉の鍵を閉めた。)

ギイッ・・ ガチャンッ・・

「・・ふぅ・・。」

(呼吸を整えた。 だが、瞳は、怪しく揺らめき。
内側から湧き上がる、力の波動は。 聖の肩を揺らした。)

(思い出の中の粒樹は、少しずつ、笑顔を消していた。)

***

(病院の中は、特別なセキュリティーがいくつも行き交い。 中にいるだけで、
青葉の心を苦しくさせる。)

ピッ ピッ・・

(胸の音を確かめ、機器を見つめていた彩の、長い睫毛が瞬く。
柔らかな表情で、青葉に振り向き、ベッドに眠る細い身体をいたわると。)

(紅いネイルの指先で、優しく。 開いた胸元を閉じた。)

「順調よ。 部屋に戻って、少し休んで。」

「昨日は、眠れなかったみたいね。」

(青葉はそっと、彩に振り向いた。)

「・・、夏樹くんは無事?」



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