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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter98 『境界』 98-114


(ベッド脇に近づいた。)

「・・夏樹くん・・。」

(紫苑の瞳は、透明に、不思議に瞬き。 ガラスの様に煌めく瞳には、
紫苑以外の人物の。 意思が宿っていた。)

トッ

(紫苑はベッドの上に膝をつき。 深く、熟睡しているらしい夏樹を、覗き込んだ。)

「・・すぅ。 ・・すぅ。」

(聞こえるのは静かな寝息。)

(紫苑は、長くさらさらと流れる、明るいベージュ色の髪を、片手で耳にかけ。)

(そっと、まるで、その呼吸を確かめるように。
耳を寄せた。)

スッ・・

(紫苑は、そのままベッドの上に身を横たえると。 その身を投げ出し、
顔をこちらに向け、眠る夏樹の腕の中へ。 飛び込むかのように、身体を預け、
静かに鼓動する胸元へ。 顔を上げた。)

【うふふ・・】

【もう少しよ・・。】

(夢を見ているのか、夏樹は全く、目を覚まさなかった。)

チリッ

(紫苑は夏樹の胸に頬を寄せ。 そっと、震える指先を、胸元の。
銀の指輪の先へ。 その奥に眠る、誰もが渇望する秘宝へ。 手を伸ばした。)



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