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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter98 『境界』 98-115


【“鍵”よ・・。】

【彼の中に、眠っている・・・。】

チリリッ・・!

(銀の指輪は小さく震え。 紫苑の指先を拒んだ。)

「・・っ。」

(本当の紫苑の意識が、胸の奥で葛藤していた。)

『だめ・・っ!』

・・チリンッ・・

***

(刹那、わずかに触れた指先から。 紫苑の中に、目の前に。
不思議な映像が流れ込んで来た。)

ザァァァーッ・・

(降りしきる雪の中。 走ってゆく、小さな裸足の足。)

(何かに追われるように、何かを追い求めるように。 雪の野原を、一人駆けてゆく。)

(小さな足元に。 ふわりと、美しい。 幾重にも重なるレースのドレスが
花びらのように舞っていた。)

【・・はぁ・・っ。 はぁ・・っ。】

『【“鍵”を・・。】』

『【壊してはダメ・・・。】』



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