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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter98 『境界』 98-116


【はぁ・・っ!】

(駆けてゆく少女の差し伸ばした小さな手が。 雪景色の向こうに触れる。)

(丁度、新しい異空間の扉が開かれるように。 新しい景色が開き。)

ゴォォォォーッ!!

(白い雪景色は一変し。 白い世界は、一瞬で。
黒い“闇”に覆われた。)

『きゃぁぁぁぁ〜・・っ!!』

(扉の向こうには、深い紺色の目を、絶望に大きく見開く。
幼い夏樹が立っていた。)

***

「夢でも見た?」

(いつの間にか、夏樹は目を開けていた。
自分を見つめる、深い紺色の瞳は。 少しの“闇”も、映さず。)

(いくつもの絶望を映しても。 輝きを失わない。)

「僕は、“闇”に染まったりしない。」

「みんなが。 紫苑さんが、いてくれるからね。」

(紫苑は小さくうなずき。 そっと、
氷のように冷たい夏樹の手を取った。)

『・・夏樹くん・・。』

「側にいて・・。」



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