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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】
Chapter98 『境界』 98-15
カッ カッ
(冷たい廊下の暗がりから、一歩。 巨大な窓から漏れる月光の下へ。
赤いヒールの足が踏み出す。)
「来たわ。」
「何が、お望み? 私と“契約”したいのでしょう・・?」
(声は、彩の耳元に響く。)
【僕の・・。 望むものをくれる・・?】
(決意した彩に、声は直に語りかけた。)
「ええ。 ただし、あなたが。 我々に、力を貸してくれるなら。」
(恐れを抱いていることを、悟られぬよう。 闇夜の中空から視線をそらさず。
白衣の両腕を組み、答えを待った。)
【・・、いいよ。 望みを言って・・。】
(少年の声は、甘く。 優しく囁いた。)
(相手が子供であることに、彩は少し安堵した。)
「あなたに・・、叶えられるかしら?」
【何・・・?】
(気配は中空を彷徨い。 彩の耳元に、冷たい吐息が届く。)
「・・“闇化”させて。 この街の人々に眠る、“欠片”を・・。」
『もはや、生命科学研究所に眠る“時の欠片”は、聖君のもの。』
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