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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter98 『境界』 98-16


『だからこそ、国は。 独自に“欠片”を得る手段を渇望している。』

(彩の、長い睫毛の下で。 窓の外に広がる、摩天楼の。 無数の明かりを映す、瞳が。
きらきらと煌めいた。)

『FOTに対抗すべき手段を・・。』

(巨大な院内の、窓に映る景色は。 彩の心を震わせた。)

(一つ一つの灯りは、そこに生きる人々の命を思わせる。)

「命に、許された時間は、誰しも平等ではないわ。」

「だから、我々が、“時の欠片”を与える人間を、選ぶ必要がある。」

「あの子供達のように平等に分け与えていては、望むべき人を救えない・・っ。」

「綺麗事では、人は救えない!」

(彩は、必死に。 自身の脳裏に浮かぶ人々を、心の中から、排除した。)

『彩・・。』

「遮断しているのに、FOTメンバーの気配が消えないわ。」

「嫌ね・・。」

『剛・・、あなたは。 恋人の最後を看取ったとき、生涯をまっとうしたのだと、

微笑んだ。』

『本当にそうかしら?』

『なぜ、笑えたの? あんなに愛していたのに・・。』



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