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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter98 『境界』 98-20


『青葉さんを初め、明日を待てない多くの人々に、“欠片”を与えるのよ。』

「それが、人の道に反することでも。 かまわないわ。」

(少年の冷ややかな気配が、彩を包み込む。 微笑む口元から、漏れる吐息が。
耳元に触れ、彩を震えさせた。)

(魔力が捕らえ。 煙のように包む冷気に。 四肢の自由は奪われた。)

【・・・、良い子だ・・。】

(彩の目は、恐怖に見開いた。 子供の姿形をしていたが、夏樹を追い詰めた、
能力者だということを、思い出させた。)

【・・“闇化”を起こすのは・・、簡単じゃぁない・・。】

【僕の探している物が、閉ざされているから・・。】

(少年の気配は、宙をさまよい。 手を彩の、胸元に伸ばした。)

ヒュオッ・・

(冷気は、首筋を撫で、開かれた少年の手が。 彩に触れようとしていた。)

「・・・っ。」

チリッ

(開いたシャツの胸元に。 銀の十字架のアクセサリーが光る。 それは、
最後の砦のように。 少年の指先を、止まらせたが。 自ら接触を望む、彩の願いが、
勝っていた。)

『生身の人間が、能力者と張り合えるはずもなかった。』

「けれど、私には。 あなたに与えられるべき力と情報がある。」



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