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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter98 『境界』 98-27


「そうだね。」

(幾人かの人が、夏樹に振り返った。 “闇”を纏わずとも、冷やりとした気配は独特で。
人々の中に、決して溶け込むことはなかった。)

『近づけて、嬉しいと思っているのは。』

『僕だけだ。』

『こうして、街の人たちの中にいると。』

『僕も、そうなれる気がして・・。』

(賑わいの中に、夏樹と紫苑の姿を見つけ。 菖蒲は嬉しそうに微笑んだ。)

「夏樹様。」

(だが、夏樹は何かを思い、困った顔をした。)

「菖蒲・・。」

「僕が幸せになる分、何かが変わってゆく。」

『みんなは強い。 けれど。』

『僕は、聖の願いに・・背いた。』

(夏樹は、目を細めた。)

『きっと・・。 聖は、苦しんでいる。』

***

「誰かの幸せの向こうには、誰かの悲しみがあるの・・。」



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