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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter98 『境界』 98-29


【・・僕が愛した魔女が・・。 僕に教えてくれた・・。】

(少年は、甘い声で、彩を誘惑した。)

(爪先が、彩の喉元を差し。 豊かな胸元へ、手をかかげる。)

(銀の十字架のアクセサリーが、闇夜に光った。)

【君にも、かけてあげよう・・。】

(彩は息を飲んだ。 少年の声は、直接、彩の心の奥底へ、
語りかけた。)

【声をもらすな・・。 心の中で・・、願え・・。】

ドクンッ

(少年の口元が。 ニヤリと笑った。)

***

(広間から、食事を終えた人々が。 満足げに、幸せな表情を浮かべ。
それぞれの部屋や売店。 大浴場へ向かい、楽しそうに歩いてゆく。)

(その中に、自分も身を置きながら。 夏樹は、なぜか、ここに居てはならないという
感覚から、離れられずにいた。)

「どした? ちっとは食えたか?」

「仙崎さん・・。」

(夏樹は微笑んだ。)

「じき、慣れる。」



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