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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter98 『境界』 98-38


***

「・・ん・・。」

(見開かれた、深い紺色の瞳の奥に。 夜の海の、潮の流れが。
激しく渦巻いて見えた。 波の向こうに、欠片を廻る人々の思惑を、隠しているようだ。)

『【わたしが“闇”に染まる前に・・。】』

『【あなたに触れたかった・・・。】』

(夏樹の脳裏に声が響いた。 静かに、胸の奥から聞こえる声に、
胸元にかけた銀の指輪に触れた。)

「・・粒樹・・。」

***

【・・《悪魔の囁き》・・】

ゴゴゴゴッ・・!

ゴワァァァァーッ!

(魔法陣は、彩の目の前で展開した。 青紫の光の粒は、切ない程美しく、
煌めき、彩の目に弾け。 火花を散らし、円形に輝き。 身体を覆う。)

(少年の爪先から、魔法が放たれる瞬間。 彩の耳元で、少年は笑った。)

「・・うっ・・・。」

(魔法陣から放たれた、黒い煙は。 ぱっと花開き。 彩の身体の隅々に染み込んだ。
見開いた瞳に、“闇”が映る様を見て。 少年は嬉しそうに笑った。)

【くっくっくっ・・・。 あ〜はっはっはっ・・!】



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