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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter98 『境界』 98-39


「ごほっ・・。」

(“闇”の魔術が浸食し、彩は重みに、身もだえた。)

『これが、私の・・。 罪。』

『救えなかった人々の・・背負った苦しみ・・。』

「夏樹君・・。」

「あなたが命をかけるなら。」

「私も、この命を、かけるわ。」

(彩は震える指先で。 白衣の胸ポケットから、小さなメモリーを取り出した。)

シュゥゥゥゥーッ・・

(魔力は、消えない爪跡を残し。 少年は、彩から身体を離すと。 まだ、赤い光を残す、
黒い瞳を揺らし。 満足そうにニヤリと笑った。)

(魔力を流し込んだ身体はきしみ。 夏の夜の熱を受けたように。
彩の肌に汗が流れた。)

【“鍵”の・・情報を・・。 僕によこせ・・。】

(少年の爪先が、彩の手の、メモリーを掴んだ。)

カチッ

コォッ・・ キンッ!

(途端にメモリーは、小さな音を立てて。 中空に消えた。)

【データが・・消えた・・? なぜだ・・。】



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