HOMENovel

Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter98 『境界』 98-5


「わかってる。 このままで、いられたらいいな・・。」

(夏樹は、目を閉じ、深く息をした。 軽くお腹にそえられた白い手が、
まるで、取り巻く風と、自分の中に循環する力が。 穏やかであることを、
確かめているようだ。)

「ふぅ・・。」

「こんなに穏やかな気持ちになったの・・初めてだ。」

「FOTの皆にも、ずっと。 味わわせてあげたい。」

「僕が言うなんて、不謹慎だけど・・。」

(静かに目を開けた。 ゆっくりと瞬く、深い紺色の瞳の輝きは、
夜の海のように穏やかで。 一時でも、戦いから解放された喜びを、かみしめていた。)

『本当に、止まってはいないことはわかってる。』

『僕がこうして、ここにいるのだから・・。』

「一時でも、“闇化”が止まって嬉しい・・。」

(静かな波動の中に、“鍵”と一つになった夏樹の心臓は、確かに鼓動していた。)

「魔法は解けるし。」

「夢は覚めるって知ってるよ。」

『なのに、よけいに生きているって、実感する。』

(夏樹は、不思議な喜びに、心が震えるのを感じた。)

『僕の決心を、揺るがしてしまいそうだ・・。』



『 次ページへ 』 『 前ページへ 』
このページのトップへ