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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter98 『境界』 98-52


(橘は息を飲んだ。 整った白髪が、うつむく橘の額にかかり。
時を重ねた頬に、見えるしわが。 今深く、言葉に出せぬ想いを。 刻んでいた。)

『これが、最後と見える。』

『采は投げられた。』

(止めることが出来ず。 遠く、行くべき道を思った。)

「晃様に、FOTを残されるつもりですね。」

『“闇化”が止まった時。 何かが動き出すと、晃様は案じておいでだった・・。』

『聖様を留めていた。 最後の物が。 消え去ろうとしている・・。』

「私は。 貴方様のお傍に・・。」

(橘は、力を秘める、強い灰色の瞳を開き。 小さな丸眼鏡の奥で、
きらきらと輝かせた。)

「ああ・・。」

(道を決めた聖は、迷いなく。 笑顔は清々しいほどに、美しかった。)

「さて。 奴は役に立ってくれるか・・?」

『・・。 もう一日だね。』

「少し、時間をかせごう。」

「奴はまだ、僕の結界を渡れない。」

「彩と接触出来たのは、僕が解いてやったからだよ。」

「・・もう一日だ・・。 晃のことは案ずるな橘。」

「・・運よく。 現れれば。」



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