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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter98 『境界』 98-53


「あの場所は・・。 他の誰でもなく、当主が守ってくれるだろう。」

(聖は、穏やかな笑顔で。 闇夜を見上げた。 思惑の渦巻く世界を、隠すように。
眩い月を隠すように。 灰色の雲が、集い始めた。)

***

カッ カッ・・

バサッ

(黒い革靴が、異空間の扉から。 FOT本部上階に降り立った。)

(風見市にある星の夜空も。 ここでは陰りを見せ。 内側へと続く、巨大なガラス張りの
高層ビルの窓は、流れる薄雲を映した。)

「剛、様子はどうだ・・。」

(晃は、巨大な大理石の廊下を、大きな足音を立て。 前へ進んだ。)

(異空間の風に、吹きさらした短い黒い髪が、乱れ。 黒い切れ長の瞳は。
皆の行く末を案じ、揺れた。)

[「・・ああ。 連中。 どうやら動き出したぜ。」]

ジジッ

***

(空間の壁を抜け、拾い出す通信機の音は。 ことさら、通じ難かった。)

「議事堂の周りに、見かけねー、執事どもが。 うようよ居やがる。」

「くっくっ。 菖蒲の言ってたことは、あながちウソじゃねーな。」



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