HOMENovel

Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter98 『境界』 98-54


(剛は、まるで奥深くの戦地から、舞い戻った戦士のような外見をしていた。)

(埃を被った、軍服の胸ポケットから。 取り出した通信機で、晃と通話し。
モニターの向こう。 空間の壁を越え、こちらに気づき近づく者がいないか。
注視した。)

「あいつらは、国が本部に。 夏樹の周りに、送り込んでいた執事どもと同類だろうぜ。」

「能力者を抑圧する。 国が奴らに、方法を伝授していたなら。」

「夏樹が本部で、窮屈な思いだったのも。 ある程度、力を出せずにいたのも。」

「納得だ。 奴らの目つきが悪いだけじゃねーだろ。」

(剛は言い、面白そうに笑った。)

「わずかなら、能力の定まった、大人の能力者には通じんだろう。」

「だが、まだ成長過程で不安定な子供には、効果がある。」

カチッ

(剛は右手の中に握った。 小さな銀のカフスを見つめた。
ただの装飾品に見えるそれは、国が長年の間。 能力者に接触し、研究を積み重ねることに
よって、創りだされた。 能力抑制装置だった。)

「こんなものを、奴らが身に着けているとは・・。」

「小さいが、近づいてくる能力者を追い払うには十分だ。」

(手の中で、カフスは剛の力を吸収し、小さく揺れた。)

「触るとしびれるみてーだ。」

(剛の彫の深い顔が、力強く笑った。)



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