HOMENovel

Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter98 『境界』 98-57


「彩・・。 元気にしてるか?」

(剛は、切れた通信機のモニターを、ごつごつした大きな手で。
切り替え。 決して繋がることのない連絡先から。
一度、わずかに着信があったことを確認した。)

『一度だけ、着信している。』

(剛は、愛しげに。 着信者名を見た。)

『音声は残っていない。』

(目を閉じ。 小さなカフスを胸ポケットに戻した。)

『終わりの合図か?』

『潔く。 お前らしい。』

「能力者と人間は、相容れないか・・。」

『相反する世界に生きる俺たちは。』

『たとえ、いつか道を違えても。 おのれの進むべき道を行くと。』

『決めていた。』

(剛は、胸ポケットに。 わずかなしびれをもたらす、小さな銀の装飾品の。
ピリリとした痛みを。 胸に深く意識した。)

「俺たちには、越えられない境界がある・・。」

「だが。 境界を、踏み越えようとしたのは、

努力しているのは。 ほかでもない、お前自身じゃないか・・?」



『 次ページへ 』 『 前ページへ 』
このページのトップへ