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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter98 『境界』 98-59


(白い指先が、シャツの胸元に触れた。 内側で、小さな銀の指輪が鳴る。)

「けど。 そう簡単に、渡すつもりじゃないだろ。」

(夜光の中でも、透き通るように、輝く。 明るい水色の瞳が。
まっすぐに強く。 夏樹を見つめた。)

「ああ・・。」

(応えたい思いで、夏樹はうなずいた。 光を集め、水色の瞳が笑った。
夏樹の手の中で。 小さな銀の指輪は、痛いほど冷たく。)

(いくら明るくソラや皆が笑いかけてくれても。 自分と皆を分かつ境界のように、
感じられてならなかった。)

『今は、魔法が守ってくれているんだ。』

『そして、この街も。 聖の結界に守られている。』

(深い紺色の瞳が、静かに瞬いた。)

「終わらねーってことは、まだ戦えるってことだよ。」

「夏樹。」

(ソラの言葉に、夏樹ははっとした。)

「いくら止めようとしても。 願っても。 “闇化”は繰り返す。」

「けどよ。 なげくことはねー。」

「試練が訪れるのは・・。 越えるチャンスがあるってことだ。

まだ、俺たちは戦える。」

(水色の瞳の奥には、強い輝きがあった。)



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