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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter98 『境界』 98-63


「お変わり、ありませんか?」

(通信機の向こうで、出た相手は、少し驚いた様子だった。)

***

『・・、菖蒲くん。』

『・・、不思議ね。 どうして今連絡してくるの・・。』

『仕事中に。 私用でかけてきたことなど、無いのに。』

(静乃は、複雑な気持ちで、通話ボタンを押した。)

(今まさに、進もうとしたドアの前で。 静乃の花柄のヒールは立ち止まった。)

「どうしたの、菖蒲くん。 何かあった?」

***

「いいえ。 すみません。 声を聞きたかったので。」

(菖蒲の言葉に、静乃は目を見開いた。)

[「え・・?」]

(言ってしまってから、意図した意味を越えたセリフに、菖蒲は自分で赤面した。)

「あ・・。 いえ、ご無事であれば。 それで。」

(四角い黒縁眼鏡の奥で、穏やかに。 黒い瞳が揺れた。)

「国に、不穏な動きがあると、聞いています。」

「本部や、研究所も。 夏樹様を利用できなくなった今。 本心で、



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