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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter98 『境界』 98-68


「彼はまだ、力に目覚めていないんじゃなくて?」

(彩は、目を細め。 静乃を見た。 紅い唇が、ニヤリと微笑み。
鮮やかなピンク色のソバージュの髪が、長い睫毛を覆った。)

「彼が大人になれば。 あなたも苦しむ日が来る。」

「その時になれば、わかるでしょう・・?」

「私の研究が、あなたを助けるかもしれない・・。」

「生きるためよ。 大切な人を生かすため。」

「能力者の恋人は。 命の危険にさらされる。 彼の力が強ければ強いほど。」

「触れた相手の命を奪うの・・。」

「病に侵された私の患者と同じく・・。 “欠片”の力が必要になる。」

「私を止められないわ・・。 静乃。」

「“時の欠片”を手に入れるためになら。」

「この手が、“闇”に染まっても、構わないのよ。」

(紅いネイルの手のひらを。 薄雲が切れた、月光にかざした。)

「・・いいえ。」

「あなたの手は、“闇”になど染まっていない。」

(ひるまず見つめる静乃に、彩は、首を振った。)

「静乃・・。」



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