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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】
Chapter98 『境界』 98-69
「もう、遅いわ。」
(美しく揺れる彩の瞳に、涙が浮かんだ。)
「夏樹君を。」
「私が、敵に引き渡したのよ。」
(冷たい白壁が。 凍りつくように、彩の言葉を響かせた。)
***
(黒い革靴が、大理石の廊下を抜け、赤絨毯の上で立ち止まった。)
(聖が創り出したFOT本部最上階に施された強固な結界が。
予期せぬ侵入者を捕らえていた。)
「こちらに。」
(時雨は、晃を案内し。 深くお辞儀した。 晃は、時雨に下がるようにと。
手で合図し。 目の前の結界に向かい、左手をかざした。)
ゴオッ!
バシュッ・・
(開かれた結界の向こうに。 入り組んだ、複雑な空間に切り取られた、
小さな部屋があり。 中心に捕らえられた人物の四肢は、いくつもに横断する、
空間の狭間にそれぞれ捕らえられ。 下手な動きをすれば、四方から、別々の空間に
切断される仕組みになっていた。)
「・・待て・・っ。 待て待てって! よお!」
「ひっひっ・・。 ずいぶんと・・。 ・・話が・・。 違うじゃねーか? ああ?」
(身体を、一寸先でばらばらにする、無数の空間の狭間の中心で。)
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