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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter98 『境界』 98-88


(静乃の言葉に、彩の顔は凍りつき。 魔力を宿した瞳が。
憎しみの怒りに燃え、静乃を睨んだ。)

「口にしないで。」

(燃え上がる、彩の怒りに、静乃は続けた。)

「彼が、笑えたのは。 簡単な想いからじゃない。」

「乗り越えたからよ。 彩。」

「幾度もの、眠れずに泣いた夜を。 乗り越えたからよ。」

「見失わないで。

彼をまた、泣かせるの・・?」

「人はそう簡単に、悲しみを越えられない。

あの時、彼が、笑えたのは。

あなたが、側にいたからじゃないの・・?」

(静乃の言葉に、彩は首を振った。)

「やめて。」

(怒りを抑えようと、彩の肩は震えた。)

「あなたは私たちと同じよ。 ずっと一緒に戦ってきた。」

「あなたは、医者としての優しさと、研究者としての厳しさの狭間で揺れていた。」

「彩。 あなたは、研究者である前に、医者であるべきだった。」



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