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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter98 『境界』 98-9


(心地よい夜風に、降り注ぐ月光は、聖の心に鋭く
突き刺さる。)

「・・・、気を抜けば、見失うか・・・?」

(金色の瞳は、眩く揺れた。)

「現実とは、厳しいものだね。」

『なぜ・・。 “闇化”を止めたりした・・。』

「今度は、僕が。 彼を“闇”に染めねばならない。」

「・・どうして、彼は。」

「僕の前に、立ちふさがる。」

『彼が、僕を。 “欠片”に導くだろうと思っていた。』

(聖は、まるで、苦痛に耐えるように。 左手で、肩に羽織ったストールを
引き剥がした。)

(真っ白なスーツに、流れる銀髪が舞う。 美しいストールが夜露に濡れ、
足元に舞い落ちた。 握る手に、いくつも光る銀の指輪。)

(一つ、小さな銀の鍵飾りの上に。 滴がこぼれた。)

(滴は、指を伝い。 指先から、地面に落ちる。)

『“時の欠片”は、“闇化”しなければ取り出せない。』

『“鍵”もまた、同様ではないか。』

(金色の瞳を細める。)



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