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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter98 『境界』 98-97


「ご機嫌よう。」

(橘は穏やかに微笑み。 一時集った三人の執事は。 それぞれの行くべき場所へ
別れた。)

***

ピシュンッ・・!

カッ カッ

(空間移動通路は、あっという間に。 菖蒲を、国家生命科学研究所の本棟へ導いた。)

ゴワッ・・!

バッ

「ここで、何をしているのですか・・!」

「この研究所は、FOTの管理下に入ったはず。」

「あなた方が好きにして良い場所では、ありませんよ。」

(黒服の執事たちの只中に、突如。 眩いクリーム色の光をまとい、姿を現した菖蒲は。
驚き、目を見開いた彩と、黒い壁のように立ちふさがる無数の執事たちの前に。
静乃を守り、遮るように。 立ちはだかった。)

『・・!』

「・・菖蒲くん・・っ。」

(静乃は、何が起こったのかわからず。 ただその場に立っていた。)

(わかったのは、今目の前に。 自分の前に立っている。 背の高い人物の、広い背中。
それはまだ、幼いと思っていたはずの。 最愛の、今すぐに会いたいと思っていた人の。
たくましく大きな、温かな背中だった。)



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