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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter98 『境界』 98-98


トッ

(静乃は静かに、目を閉じ。 それ以上何も言えず。 菖蒲の背に、
頬を寄せ。 震える両手で、その背を抱いた。)

「・・・っ。」

(強い力が、菖蒲の中に流れ。 前を見る菖蒲の瞳を、強く輝かせた。)

「安全な場所に、戻りましょう。 静乃さん。 私と一緒に。」

(菖蒲はそっと、後ろの静乃に微笑んだ。)

「・・! どうやってここへ。」

(彩は動揺し、優しい菖蒲の見せる、輝く黒い瞳の射るような強い視線に。
心を乱した。)

「私に。 国からの使い、執事たちの力は通用しませんよ。」

「あいにく、私は能力者よりも、執事が本業なもので。」

「参りましょう。 剛様が援護してくださいます。」

(菖蒲は、鋭い視線を、黒服の執事たちに向け。 背中の静乃に、優しく告げた。)

「ええ。」

(静乃は答え。 白手袋の両手が、強く静乃を抱き留めた。)

ゴワッ・・! ババババッ・・!

(空間通路が二人を包み込む。 逃がすまいと、執事たちは追いかけた。
彩は、小さく。 囁くように命じると。 背を向け、研究所の奥へ。
ヒールの音を響かせ、
姿を消した。)



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