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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter99 『決意』 99-25


(夏樹の意識は、現実に引き戻され。 混乱する思考に、
目を閉じ。 夏樹は片手で、頭を押さえ。 紺色の髪を掴んだ。)

(夏樹の身体は、昨夜泊まったホテルの一室にあり。 窓辺のテーブルの前、
ソファーに腰を下ろしていたが。 思考は、聖の想いに捕らえられていた。)

『僕は、それを阻みたかったのか・・?』

『彼女をどこへも行かせないため。』

『彼女を傷つけると知っていたのに。』

***

ザザザザーッ・・!!

(強い風がよぎり、鮮やかな色彩の、無数のバラの花弁が舞い上がる。)

(むせかえる香りと、舞い散る花。 一面に、敷き詰められた華やかな花弁の上に。
淡いレースの裾が、細く白い足が。 小さな身体が横たわる。)

(交錯する記憶は、またいつかの。 別の日の、二人の姿を、
夏樹の目に浮かばせた。)

「どこへ、行くと言うんだ。」

「粒樹・・。」

「ここに居ればいい・・。 このままずっと。」

『想いは、粒樹へは届かず。』

『彼女は、僕の腕の中で。 身じろぎもせず、静かに微笑んだ。』

【・・彼を・・、助けるため・・。】



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