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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter99 『決意』 99-32


(想いは強く。 夏樹の目頭を熱くさせた。)

「あの海・・。」

「どこだ・・。 見たことがある・・。」

「・・子供のころ。 居たことがある。 思い出せない・・。」

「ここではない・・。 どこかの海だ・・。」

(夏樹は、閉じた目の奥に、かすかに甦る。 遠い記憶の残像を見た。)

***

『あのまま、国の施設に捕らわれていれば、あるいは、生きていたのではないか。

彼女があの海に行けず、目的を果たせず。 そのために、幼い夏樹が死のうとも。』

『構わなかっただろう・・。』

『なぜ、僕は彼を助けた。』

『なぜ、彼は粒樹に似ている・・。』

『それは罪滅ぼしか・・。

彼女を忘れることが出来ない、僕の未練か。』

***

(聞きたくないと願っても。 その言葉は、粒樹の“鍵”を通し、夏樹の耳に届いた。)

「わかっていた・・。」

「この世に居るべきは。 僕ではない。」



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