HOMENovel

Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter99 『決意』 99-38


(聖は、最後に手を放し。 空になったカップは、無残にも。
浸み出した紅茶の上に、粉々に砕けた。)

(自らが手を下し、元に戻らない破片は。 “時の欠片”を思わせた。)

『僕は、何を期待していたのだろうか。』

『許されることか。』

『救われることか。』

(金色の瞳に、夏樹と千波の顔が浮かんだ。)

(二人は、聖を案じていた。)

『どちらも、永遠に訪れない。』

『そう、知っていた。』

「・・誰も。 ここまで来てはくれない。」

「僕が、“闇”の底へ、誘おう。」

(橘は、聖の身を案じ。 進むべき道を思った。)

「・・事は。 そう運ぶでしょうか・・?」

(気がかりな表情を浮かべる橘に、聖は自信あり気だった。)

「気づかれまい。」

「奴は上手くやるだろう。」

(橘は、丸眼鏡の奥の瞳を、煌めかせた。)

「いいえ。 異国の能力者のことではございません。」



『 次ページへ 』 『 前ページへ 』
このページのトップへ