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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter99 『決意』 99-46


ザザーンッ・・

ザザーン・・ッ

(夜明け前の空気は凛とし。 何も遮るものがない、開かれた海を前に。
二人は、砂浜に立った。)

(窓の向こうから見ていたのと、それは全く違った。 ガラスの向こうの世界。
潮風が打ち付け。 荒々しく波音が響く。)

(雲が無く、天気は良かったが。 澄んだ空気に、まだ暗い海に。 紫苑は緊張した。)

「少し、空の色が変わって来たね。」

「そうだね。」

(思ったより強い海風に、身体を揺らし。 何か話したくて、紫苑から声をかけた。)

(だが、答えた夏樹が。 とても間近に立っていたので。 紫苑はふと、寝起きで、
髪もぼさぼさだったのに。 海風にさらされ、余計に乱れていることに。
頬を染めて、片手で、髪に触れた。)

「太陽が出たら、暑くなりそうだ。」

「うん。」

「こうして、街へ来て。 触れて、初めて分かったことがある。」

「僕は、紫苑さんに、迷惑をかけているだろう。」

「知らなくてもいいものを知って。 見なくてもいいものを見ている。」

『僕の存在は、“鍵”の存在は、人に疎まれるものだ。』

『どうして、普通の人間として、君に出会えなかったんだろう・・。』



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