HOMENovel

Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter99 『決意』 99-48


(白い四本柱の玄関を出て。 明るみ始めた空の下。
白亜の洋館を見上げた。)

(白いレースのカーテン越しに、少し歪んだガラス窓を見つめる。
それぞれの部屋の主は。 まだ、眠りについているのだろう。)

ピチッ ピチチチッ

(小鳥たちが、朝を告げ。 木々の間を舞い、空の彼方に飛び立つのを、
千波は見送った。)

「あの人は、不器用なの。」

「簡単に、道を変えてはくれない。」

(困ったように微笑む千波の、可愛らしい短い髪に。 クローバーの髪飾りが
きらりと光った。)

「組織の頂点に立ち。 能力者の中でも、あの人にかなう人はいない。」

「だから、心を見せることが出来なかった。」

「愛する人への想いを、敵に見せるなど、命とりだわ。」

「・・嘘だって、知っていた。」

「あの人が、わたしにかける『愛している』の言葉は、本心ではないわ。」

「わかっていた・・。」

「でも。 聖・・。 あなたが好きなの。」

「わたしは、夏樹のそばにいくわ。」

(千波は、屋敷の主に向けて、静かに告げた。 主もまた、ここを去ると知っていた。)



『 次ページへ 』 『 前ページへ 』
このページのトップへ