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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter99 『決意』 99-49


「さよなら。」

(千波の、明るい茶色の瞳が。 穏やかに微笑んだ。
大きな瞳に映る景色に。 舞い飛ぶ赤い羽根が、迎えに来た。)

ゴォォォォーッ

***

「ギャギャギャッ・・!」

バサバサバサッ・・

(巨大な鳥の影が、山深く、暗い木々の上を横切る。)

(ワシにも見えたが、それには幾つもの頭があり。 多くの目が、仄暗い空を
映していた。)

(深い山奥は、不気味な静寂を保ち。 明け行く太陽は、まだ遠い。)

(暗闇の中に、一筋の炎が点った。)

ジジッ・・

(太い柱の門の下。 黒地に金の、鳳凰を描く家紋を刻む。 幔幕の奥から、
小さな炎が動いた。)

ジャリッ ジャリッ・・

(炎を持つ、美しい白い手が。 艶やかな着物の間から、差し出すのは、
和蝋燭の火。)

(火は、幔幕の外にたまる、邪気に触れ。 ちりりと、揺れた。)

「何者ぞ・・。 そこにおるわ。 姿を見せぬか。」



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