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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter99 『決意』 99-50


「ニャーッ」

(炎に照らされ、姿を見せたのは。 黒猫一匹だった。)

「・・・。 曲者が。 去れ。」

「当主は、おらぬ。」

(美しい着物をまとう女性は、鋭く眉根を上げ。 蝋燭の炎をかざした。)

ジジッ・・

「ニュー・・」

ジャリリッ・・

(黒猫は、背中の毛を逆立て。 黄色い目を細めると。
庭石の上を、素早く、暗闇の中へ消えた。)

カララッ

(外の物音に気付き、小さな手が。 本殿の扉を開き。 黒い幔幕の向こうから、
少女が姿を現した。)

「・・どうした? 楓。」

(楓と呼ばれた女性は、はっとし。 振り返った。 美しいその肩に、長い黒髪が舞う。)

「・・艶姫様。」

「何でもございませぬ。 さぁ、中へ。 まだ早うございます。」

(楓は、さぁさぁと、優雅に手招きし。 艶を幔幕の向こうへ。 重い柱の門の奥へと。
身を隠すかの様に、促した。)



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