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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter99 『決意』 99-52


(艶は鋭く、山門の奥を睨むと。 黒く美しい髪を揺らし、
幔幕の向こうへ戻り、囁いた。)

「・・兄上。」

「兄様を、守りたまえ。」

(静かに、祈るように、視線を落とし。 両手を合わせる、艶の耳に。
頭上高く、舞い上がる妖魔たちの声が遠く響いた。)

「ギャギャギャッ・・!」

バサバサバサッ・・

バサササッ・・

***

バササッ・・

(晃は、自室で目を開けた。)

(窓の外に響いた羽音は、つかの間、見ていた夢の気配を。
呼び覚まし、汗ににじむ短い髪をかき上げ、
両手で顔に触れた。)

「ふっ・・。」

(晃は、自分に笑い。 目を細め。 夢に見る遠い記憶の声に、耳を傾けた。)

『〈・・時は止まったまま・・。〉』

『〈繰り返す思い出は。〉』

『〈やがて己の命を奪う。〉』



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