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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter99 『決意』 99-53


(晃を目覚めさせる。 その香りは、すぐ傍にあった。
美しく長い髪が、透き通る肌に掛かる。
重く、黒い着物をまとう腕が、背中から、晃を包み込んだ。)

「〈・・忘れろ・・。〉」

「〈・・お前に、生きてほしい。〉」

(その声は、椅子に座る晃の耳元で聞こえ。 着物姿の細身の男性は、
晃のすぐ後ろに立ち、両腕で、晃を抱いた。)

「あほう。 亡霊につきまとわれては、

生きた心地がしない。」

「・・ふぅ。」

「お前の声を、間近に感じるとは・・。」

「俺の身が危ないのは、本当らしい。」

(だが、言うと晃は、嬉しそうに笑い。 立ち上がった。)

(黒い上着に腕を通し、晃は、鋭く窓の外に
立ち込める気配を睨んだ。)

コンコンコンッ

(ノックの音に振り返ると、扉が開き。 ドアの向こうから。
落ち着いた声が、いつものように晃を呼んだ。)

「晃様。」

「支度が整いました。 階下に皆そろっております。」

(晃は、微笑み頷いた。)



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