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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter99 『決意』 99-55


(面白そうに笑う晃に、時雨はあきれ、半月形の眼鏡を光らせ。
襟元を整えていた白手袋の手を止め。 乱暴に、晃の胸元を払った。)

トンッ

「勝手にしろ・・。 お前らの友情に、付き合いきれん。」

(晃は笑い、時雨と並び、廊下に出た。)

(閉じられるドアの向こう。 部屋に残された、時宗の気配が。
静かに、二人の背中を見送った。)

キイッ バタン・・

トッ トッ

(アンティークランプの灯る、白亜の洋館。 赤絨毯の上を二人は歩いた。)

(仄暗い廊下の隅々にまで、屋敷の主の放つ、張り詰めた重い空気が満たされていた。
それでも、時雨の鋭い眼差しの先。 屋敷の周囲は強固な結界に守られている。)

ギイッ

「そろったか。」

(重厚な扉を開き。 晃は屋敷の中心にあるホールに足を踏み入れた。)

「晃。」

(入ってすぐ、長テーブルの前で腕を組み、気難し気な顔をした光が
振り向いた。)

(透き通る黄色く短い髪が、鋭い視線の上に流れる。)

「おはよう。 晃さん。 早いのね。」



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