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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter99 『決意』 99-63


「夏樹様。 紫苑様。」

「こちらにいらっしゃったのですね。」

「・・美しい朝焼けですね。」

(菖蒲は、夏樹と紫苑の後ろに立ち。 美しい革靴が、砂に汚れるのも気にせず、
太陽の熱を感じ始めた朝の海岸に見惚れた。)

「菖蒲さん。」

(紫苑は急に、夏樹と二人きりだったことを思い出し、頬を染め、目を逸らした。)

「おはようございます。」

「お邪魔でしたか? 夏樹様。」

(菖蒲は、四角い黒縁眼鏡の奥で、嬉しそうに笑った。)

「おはよう・・。 ふぅ。 昨日、二人きりにしてあげたのに、お前は割って入るんだ?」

「はい? 何か、不都合でも?」

「間もなく、皆様が来られます。」

「その前に、お声かけしたく思いまして。」

(夏樹は眉根を寄せ、肩をすくめた。)

「何?」

(不機嫌になったらしい夏樹の様子に、菖蒲は微笑み。 気取られないように、
白手袋の片手で、口元を抑え。 笑いをこらえた。)

「夏樹様は、がんばっていらっしゃいます。」



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